仕事をするゴッホ展

Fig. 1 Vincent van Gogh Self portrait as a painter 1887-1888, Paris, Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

オランダのアムステルダムにあるファン・ゴッホ美術館では、開館40周年を記念する展覧会「仕事をするゴッホ」が開催されている。ゴッホが画家として活動した10年間の成長過程を絵画150点をはじめ、素描、スケッチブック、手紙、絵の具やパレット等、総数200点で辿るものである。また、本展覧会はゴッホ美術館が8年間にわたって実施した絵画調査の集大成でもあり、ゴッホの絵画技術と実際の描画方法が詳しく紹介されている。

《画家としての自画像》(図1)は、制作意欲に燃える画家としての姿を描き出したとして、ゴッホの表情に注目されることが多い。しかしながらこの展覧会では、ゴッホが使用する画材に焦点をあてている。ゴッホは屋外用のイーゼルの前に立ち、方手にパレットを持ち、絵筆を握っている。絵筆は合計7本の平筆と丸筆である。平筆は面を塗るのに適しており、丸筆は細部の描き込みに適しているものだ。さらに、パレットに置かれた絵の具を分析した結果、二つの油壺の上にあるオレンジは「カドミウム・オレンジ」、その左に見える濃い青は「コバルト・ブルー」と「鉛白」を混ぜ合わせたものであると判明した。

Fig. 2 Vincent van Gogh Sunflowers,1889, Arles
Van Gogh Museum, Van Gogh Museum, Amsterdam
(Vincent van Gogh Foundation)

美術館の2階と3階では、科学調査の結果が写真や映像を使って分かりやすく説明されている。ゴッホは経済的理由から、しばしば一度描いたカンヴァスにまったく新しい別の作品を塗り重ねていた。ゴッホ美術館は塗り重ねられた可能性のある作品を、X線を使って写真撮影することによって、下にどんな絵が隠れているのかを明らかにした。そのほかにも、絵画から採取したサンプルを観察できる顕微鏡が置かれ、絵の具がどのように重ねられているのかを見ることができたり、絵の具の盛り上がりを手で触れて実感できるように作品の一部を立体復元したものが用意されているなど、さまざなま工夫がなされている。

Fig. 3 Vincent van Gogh’s Pallete from Auvers Musée d’Orsay, Paris
Photography: Erik and Petra Hesmerg

8月まで、ゴッホ美術館が所蔵する《ひまわり》(図2)に加えて、ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵の《ひまわり》が《ルーラン夫人の肖像》を中心に左右対称に並べて展示されている。これはゴッホがスケッチブックに描いた三連画を再現したものである。また9月以降は、《寝室》の3バージョン(ゴッホ美術館、シカゴ美術館、オルセー美術館所蔵)が一堂に会する。そのほかにも、ゴッホが使用した唯一現存するパレット(図3)や、4点しか残っていないスケッチブックのうち3点が展示される貴重な機会なので、ゴッホファンにはぜひとも訪れていただきたい。

「仕事をするゴッホ」展は2014年1月12日まで。

ゴッホ美術館 Van Gogh Museum
Paulus Potterstraat 7
1071 CX Amsterdam
The Netherlands
+31 20 570 5200
http://www.vangoghmuseum.nl

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA