フランス・ハルス美術館、創立100周年記念展

オランダのハールレムにあるフランス・ハルス美術館は、今年100周年を迎えた。それを記念して17世紀オランダ絵画の黄金時代を代表する画家フランス・ハルスと、彼と影響関係にあった巨匠たちの作品を集めた展覧会「フランス・ハルス- レンブラント、ルーベンス、ティッツィアーノとの共通点」が開催されている。大規模なフランス・ハルスの展覧会は25年振りのことである。

ハルスは人物画を得意とし、モデルの自然なポーズや動き、快活な表情など、まさに血の通う人間の姿を描き出した。《笑う少年》(図左)では歯を見せ無邪気な笑顔をみせる少年が描かれている。17世紀の芸術理論では笑っている表情を描くことは大変難しいとされていたが、ハルスは魅力的な笑顔をすばやい筆致で巧みに表現した。

The inner yard of the museu

美術館奥の大広間には、ハルスによる自警団の集団肖像画が集められている。17世紀にスペインからの独立を果たしたオランダでは、防衛と治安維持のために市民が自警団を組織していた。彼らはしばしば集団肖像画を画家に注文して描かせた。集団肖像画が描かれだした当初は、全員の顔が整然と並ぶ集合写真のようなものが多かったが、次第に画面に動きが導入されるようになり、団員達の宴会という設定が流行した。ハルスは団員一人ひとりの表情や個性を描き分けながらも、気の置けない仲間同士がにこやかに酒を酌み交わす、賑やかな宴会の様子を描いた。この部屋の中央には宴会の食卓が再現され、あたかも観客が彼らの宴会に紛れ込んだような気にさせられる。

展示室では、ハルスとそのほかの画家たちが同じ画題で取り組んだ作品が比較できるように並べて展示されている。そのうちの一組が、1622年にファン・バビューレンが描いた《リュート奏者》と、その翌年にハルスが制作した《リュートを持つ道化師》である。ローマで修行を積んだディルク・ファン・バビューレンは、音楽を奏でる人物やカードを遊びをする人物など、カラヴァッジオ派が好んで描いたテーマをオランダにもたらした人物の一人である。ハルスはバビューレンによってもたらされた新しい画題に取り組み、楽器を奏でる人物を複数描いている。《リュート奏者》に描かれた人物は茶目っ気たっぷりに微笑み、音楽を心から楽しんでいるようだ。

ハールレムを活躍の場としていたハルスであったが、近年の研究において同時代の画家たちとの交流が明らかになった。今展覧会はハルスを中心として、レンブラントやルーベンスなど、17世紀のオランダ・フランドル絵画の影響関係をたどるいい機会になるであろう。

展覧会は7月28日まで開催(月曜日休館)。

フランス・ハルス美術館 Frans Hals Museum
Groot Heiligland 62
2011ES Haarlem
The Netherlands
http://www.franshalsmuseum.nl/en/

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