2016年は奇想の画家ヒエロニムス・ボッシュの没後500年にあたる。この記念すべき年に、彼の故郷であるオランダのデン・ボッシュ(正式名称:スヘルトーヘンボッシュ)にて「ヒエロニムス・ボッシュ―天才のビジョン」展が開催中だ。本展では、貴重な祭壇画などの絵画20点と19点の素描、そして彼の追随者たちの作品を展示し、史上最大規模のボッシュ回顧展となっている。
二つの世界:現実と幻想
ヒエロニムス・ボッシュは二つの世界で生きていた。彼を取り巻く現実の世界と、彼の頭の中に存在する幻想の世界だ。現実世界はキリスト教の神によって創造され規定されている。どんな悪や恐怖、暴力であろうとも、全てが神によって定められたものである。ボッシュは神が創りだした現実世界を詳細に観察し、そこに鳥や魚、人体、人工物などを自由に合成した魔物や怪物など架空の生物を紛れ込ませ、独創的な世界を創造した。ボッシュの代表作、三連祭壇画《干し草車》(fig.1)では、ユーモラスな魔物たちが中央の干し草を右側の地獄へと運び込もうとしている。
発見されたボッシュの作品
この展覧会の開催に合わせて、世界的なボッシュ作品の調査が行われた。その過程で複数の作品がボッシュの真作であると認められた。そのひとつがアメリカで見つかった《聖アントニウスの誘惑》(fig.2)である。悪魔の誘惑に晒されて信仰を試される聖アントニウスは、ボッシュがしばしば取り組んだテーマのひとつである。調査では、この小さな作品は三連祭壇画の一部であったであろうと結論付けている。
「ヒエロニムス・ボッシュ―天才のビジョン」展は5月8日まで(会期中無休)
北ブラバント美術館 Het Noordbrabants Museum
Verwersstraat 41
5211HT ’s-Hertogenbosch
The Netherlands
http://boschexpo.hetnoordbrabantsmuseum.nl/en
5211HT ’s-Hertogenbosch
The Netherlands
http://boschexpo.hetnoordbrabantsmuseum.nl/en