「ふしだらな女:1850年から1910年にかけてのフランス美術における売春」

Fig.2 Bed, after 1860, painted, gilt and carved wood, Ville de Neuilly-sur-Seine. Photo: Jan-Kees Steenman

アムステルダムのゴッホ美術館で、19世紀後半から20世紀にかけてのパリの文化を語る、挑戦的な展覧会が開催されている。

パリの夜を彩る女たち

19世紀、産業革命によって生活環境が改善し、オペラ座やエッフェル塔などが建造され、パリの街が様変わりした。これらの工事を請け負ったのはフランス各地から集まった労働者だ。彼らは夜になると快楽を求めて女たちの元に行った。

Fig.1 Edgar Degas, Absinthe, 1875–6, oil on canvas, 36 ¼ × 27 in., Paris, Musée d’Orsay

当時、パリには数多くの娼婦がいた。街頭やカフェなどで客引きをする女たちから、娼館で働くもの、そして、上流階級の愛人から邸宅を与えられた高級娼婦などである。また、スポットライトを浴びる華々しいキャバレーの踊り子やオペラ座のバレエダンサーも、舞台が終わればパトロンの男性の妾のような存在になるという意味では、娼婦と同じ境遇であった。

芸術家たちにとっての娼婦

芸術家たちは、詩人ボードレールが『現代生活の画家』のなかで展開したモデルニテ(modernité 近代性、現代性)を表現できる格好の題材として娼婦を扱った。ドガは客引きの場であるカフェでアプサンを飲む姿を描き(fig.1)、トゥールーズ=ロートッレック、ピカソ、ヴァン・ドンゲン、クプカなどは男女の熱気に溢れたキャバレーのなかで、ひときわ派手な服装で男たちに媚態をみせる女たちを描いた。

観覧者は、男が女を見初めるパリの路上、女たちが客を探すカフェやダンス・ホールなどから、閉じられた世界である娼館や非合法な売春が行われていた場所へと導かれる。展示作品には美術作品のほか、高級娼婦のベッド(fig.2)や娼婦らが使用していた小物、また彼女らを登録し管理するための台帳などもあり、絵画に描き出されない実際的な女たちの様子も伝えている。

「ふしだらな女:1850年から1910年にかけてのフランス美術における売春」展は、6月19日まで開催。

ゴッホ美術館 Van Gogh Museum
Museumplein 6
1071 DJ Amsterdam
The Netherlands
http://www.vangoghmuseum.nl

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