酒と麻薬に浸る退廃的な生活を送り、35歳の若さでこの世を去った画家、モディリアーニ。彼の作品100点を集めた回顧展が、ロンドンのテイト・モダンで2018年4月2日まで開催されている。
モディリアーニの作品のうちで最も知られているのは裸婦像(fig.1)だろう。女性たちは単純化したフォルムで哀愁と官能的な美しさを湛えている。このフォルムの探求は彼が貧困のうちに健康を害して断念した彫刻作品で培われたものだ。1909年から1916年まで、アルカイック期のギリシア彫刻や、アフリカの仮面に影響を受けた作品を断続的に制作していた。1916年にふたたび絵画に専念した画家は、のみで切り出したような線描を絵画に持ち込んだ。
1916-1917年の裸婦のシリーズは、この時期の絵画への意欲的な取り組みの表われといえる。モディリアーニは、ピカソやキスリング、デ・キリコらとともにグループ展に名を連ね、同時代の前衛画家のひとりと目されるようになり、生前唯一の個展「モディリアーニの絵画と素描展」を画廊ベルト・ヴェイユで開いた。しかしながら、開幕初日、ショーウィンドーに展示された裸婦像が「わいせつ」だとして警察に撤去を命じられ、批評家からの反響も全くといってよいほどなかった。
1918年、第一次世界大戦の戦火とスペイン風邪の脅威を避け、モディリアーニは画商ズボロフスキに導かれてニースに赴く。南フランスで出会う農夫らをモデルに描いた作品(fig.2)には、それまでにない素朴さや穏やかさがうかがえる。優美な描線と透明感のある明るい色彩との調和を通じて、独特の精神性を帯びるようになっていく。静穏で古典的なものへの憧憬はピカソをはじめ前衛の芸術家に広く共有された姿勢でもあったが、モディリアーニにおいては、少年期にその心を強くとらえたシエナ派など、13-14世紀のイタリア美術によるものであった。
「モディリアーニ」展は2018年4月2日まで
Bankside
London SE1 9TG
United Kingdom
www.tate.org.uk/visit/tate-modern
開館時間:
日曜日-木曜日 10:00-18:00
金曜日、土曜日 10:00-22:00
休館日なし