部門の専門キューレーター、メノー・フィツキー氏によると、オランダは古くからアジアと交易を通じて関係が深く、特に中国、日本、韓国、インドネシアで収集された美術品、その数、およそ7000点を所有しているという。 これらの中から、新しいウィングには常時365点が展示され、うち250点は定期的に展示替えをして、最終的にはほとんどのコレクションを一般公開するということだ。
ライクスミュージアムの旧館から独立したユニークな形状のウィングは、イタリア人建築家のアントニオ・オルティス氏の設計による。地階と地下1階で総面積670平米。地階の方は、インドやインドネシアの美術品を、地下1階には、日本、中国、韓国の作品を置く予定とのこと。12世紀のインドの「シバ神」を現した彫刻や、中国の観音菩薩像と共に、最近コレクション入りをした日本の仁王像一対がこのウィングでの目玉となる。
フィツキー氏は、この独立したウィングの紹介にあたり、3つのポイントを強調した。一つは、来館者がゆったりとした気持ちで作品を見られる雰囲気であること。そして、ユニークな外観ではあるものの、作品を映えさせる内観であること。さらに、小ぢんまりとした建物であるが階段や回廊を用いて意外な効果をもたらせていることを挙げている。
新生ライクスミュージアムでは、その中心部に最も来館者が鑑賞したいと思う作品群、つまり、レンブラントの「夜警」を初めとした、オランダの誇る17世紀絵画を集めて展示する。そして、時間のない海外からの来館者でもオランダ絵画の粋に触れられるよう、「夜警」を展示するNight Watch Room、それに続くGallery of Honourへの直通エレベーターを設置している。デザイン公募から始まり、紆余曲折のあったライクスミュージアムの改築工事だが、ようやくその終わりが見えてきたようだ。
しかし、ヨーロッパの優等生の一人であるオランダもここのところの経済危機からは免れ得ない。去年、政府は芸術や音楽への助成金を大幅にカット。そのため、いろいろな芸術に関わる機関は、全て、自らの力で財源確保を余儀なくされている。美術や芸術に対して寛容で、しかも長期的な視野からの「広報」を目指す企業に働きかける一方、「友の会」を通じて献金を募ったり、一般市民から非課税対象の申告ができる額の寄付金を募るキャンペーンを行ったりと、どこも大変な努力をしている現状である。
ライクスミュージアムは、改修工事中にも唯一オープンした新ウィングにオランダの企業フィリップスがスポンサーとなり、その名を冠した。アジア美術の新ウィング、あるいは、Gallery of Honourにも、来年のオープニングに際して名前を冠することができるよう、新たなスポンサー探しを始めているようだ。
Rijksmuseum, The Masterpieces
http://www.rijksmuseum.nl/