オランダのライデンにあるシーボルトハウスでは、5月27日まで「仮面の戦士/武士と合戦の晴れ舞台」展を開催している。能と武家文化の結びつきを、仮面を鍵にして明らかにしていく趣旨の展覧会である。
展示室に入ると、まず、きらびやかな唐織りの能装束と男女の能面が目に飛び込んでくる。右壁には華やかな女性ものの着物二枚と微笑をたたえた若い女性の面が並んでいる。一方、反対側には藍地に金糸で雷電と鶴の模様を縫い上げた着物と、武神として讃えられる力強い三日月の能面や、深い皺と植毛された眉や髭が特徴的な翁の面がある。そして、能装束の壁の奥には二体の甲冑が堂々と控えている。その甲冑の佩楯(はいだて)部分には着物の端切れが使われ、兜にはめ込まれた甲冑面は武人の三日月のように力強く、開いた口からは猛々しい雄叫びが聞こえるようだ。
14世紀になり、室町幕府の将軍、足利義満が観阿弥・世阿弥を庇護するようになると、能は武家社会と強いつながりを持つようになる。その後、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と能を好む有力者が続いたことでさらにその結びつきが強まった。そのようななかで生まれたのが甲冑面(面頬、頬当て)だ。この甲冑面は顔面、特に両頬から顎を保護する防具であるが、能楽に登場する般若のように鬼気迫る表情をしている。
16世紀後半には、武士たちの間で激しい表情をした烈勢面に人気が集まった。鋭く刻まれた皺が特徴で、しばしば髭や眉が植毛されている(fig.2)。それに影響を与えたのが能楽の悪尉(あくじょう)の面である。悪尉は強く恐ろしい表情をした翁の面で、圧倒的な攻撃力と超自然的な強さを表現し、多く老神・怨霊などに用いられてきた。仁王のように激烈な表情をもつ烈勢面は、その表情で敵を威嚇し、また身に着けた自分自身の闘志を鼓舞する役目も担っていた。
「仮面の戦士/武士と合戦の晴れ舞台」展は2018年5月27日まで
2311 GE Leiden
The Netherlands
http://www.sieboldhuis.org/ja/
開館時間:
火曜日-日曜日 10:00-17:00
休館日 月曜日、1月1日、4月27日、10月3日、12月25日