ダ・ヴィンチ展, フェルメール展 (イギリス)

Cambridge, the Fitzwilliam Museum

今、イギリスで行われている展覧会のうち、とても注目を浴びている2つをご紹介したい。

まずは、ロンドンのナショナルギャラリーで開催中のダ・ヴィンチ展、Leonardo Da Vinci: Painter at the Court of Milanである。ダ・ヴィンチは、ご存知の通り、フィレンツェで画家となるための修行を積んだが、1482年頃から1499年までは,ミラノ公国のス フォルツァ家当主であるルドヴィーコ(イル・モーロ)に仕えている。展覧会では、このミラノ時代のダ・ヴィンチの作品に焦点をあてており、ルドヴィーコの 愛妾だったという、チェチーリア・ガッレラーニを描いたといわれる「白テンを抱く貴婦人」(チャルトリスキ美術館、クラクフ、ポーランド蔵)のほか、ルー ヴル美術館とナショナルギャラリーロンドンが所有する、2点の「岩窟の聖母」や、「リッタの聖母」(エルミタージュ美術館蔵)など、名作が並んでいる。特 に、2点の「岩窟の聖母」は、1室に向かい合わせになって展示され、比較できるように扱われていた。良く知られた名作だけに、こうして一緒に見られる機会 は得がたい。  

今年になってダ・ヴィンチの真作であると特定された作品「サルヴァトール・ムンディ(Christ as Salvator Mundi)」(個人蔵)も、初公開されている。長い間、行方不明になっていたという作品でもあり、真筆発表への賛否両論は今後も避けられないだろうが、 自分の目で見られる幸運は嬉しい。

ダ・ヴィンチは、ほとんどの作品が未完成であるといわれているが、ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院に残した「最後の晩餐」は、その数少 ない例外としても知られている。今回の展覧会の最後を飾るのは、この「最後の晩餐」であるが、もちろん、ミラノの壁画を飾っているのではない。1520年 頃に油彩で残されたという、忠実な模写作品である。こちらの状態は、今も非常に色彩鮮やかで、しかも、オリジナルではもう見ることのできないキリストの足 なども描かれている。1977年から1999年の長期に亘ってオリジナル壁画の修復作業が行われたことは記憶に新しいが、この修復作業でも、この模写作品 のディテールが非常に有用であったということだ。  

展覧会は、来年2月5日まで。作品の保護のため、時間を区切っての入場制限をしており、会期中の全ての予約チケットは完売しているのが残念だ。

さて、次にケンブリッジの誇るフィッツ・ウィリアム美術館。ここでは、フェルメール展Vermeer’s Women: Secrets and Silenceを開催中である。17世紀のオランダを代表する巨匠の一人、フェルメールや、彼と同時代の画家たちが描いた女性たちの姿を日常から切り取っ て描いた作品群の展覧会で、油彩のみ32点のこぢんまりした展覧会である。フェルメール作品はThe Music Lesson (英王室所蔵)、A Young Woman Seated at a Virginal (ロンドン・ナショナルギャラリー蔵)、The Lacemaker(ルーヴル美術館蔵)、Young Woman seated at a Virginal (個人蔵)の4点が出展され、フェルメールと同じ時代の画家たち、ヘリット・ダウ、ヤン・ステーン、ピータ・デ=ホーホ、ニコラス・マースなどの、非常に 状態の良い作品群が脇を固めており、珠玉の展覧会と言っても過言ではないと思う。驚くことに、この展覧会は、このレベルでも入場無料。それもあってか、連 日、たくさんの見学者が訪れており、美術館始まって以来の入場者数だと関係者は嬉しそうに語っていた。

ナショナルギャラリー
Trafalgar Square, London WC2N 5DN
http://www.nationalgallery.org.uk/

 

フィッツ・ウィリアム美術館
Trumpington Street, Cambridge CB2 1RB
http://www.fitzmuseum.cam.ac.uk/