マウリッツハイス美術館、リニューアル・オープン

2年間の改修工事を経て、6月27日、マウリッツハイス美術館が開館した。この改修工事は、美術館と道を挟んで隣接する旧プライベートクラブの建物の一部が貸し出されたことにより実現した。(図1)これら二つの建物は新しく作った地下ロビーでつながっている。旧来の美術館には以前のようにレンブラントやフェルメールをはじめとするオランダ黄金時代の作品が常設展示され、新翼棟には企画展示室や子供用のレクチャールームや図書館などが新設され、教育施設の拡充がはかられた。

fig.1 The main building and new wing of the Mauritshuis

旧来の建物の改修工事では、往年の姿を再現することに主眼が置かれた。ヤーコプ・ファン・カンペンの設計による17世紀のオランダ古典様式を代表する建物は塗装しなおされたことで、シンメトリーで直線的なデザインが以前よりも際立つようになった。内装は1704年に一度火災で焼失したのちに18世紀初頭に修復されているのだが、建築当時ではなく、18世紀の様式を取り入れた改装がなされた。漆喰の壁は塗りなおされ、壁紙は美しい模様が編み込まれたシルクの布に張り替えられている。

この長い閉館中に修復されたのは建物だけではない。空調設備や照明なども一新された。また、壁画装飾の一部として組み込まれている天井画なども取り外され、保存・修復処置がなされた。黄金の間を飾るイタリア人画家ペリグリーニの作品は、以前使用されていた石炭ストーブから出た煤によって灰色がかった色に変色してしまっていた。今回の修復によって濁ったグレーの膜が除去され、本来の柔らかな色彩を放つようになった。(図2)

fig.2 Fotograaf: © Ronald Tilleman, Credits: Mauritshuis, Den Haag

展示室では17世紀オランダの黄金時代を代表する画家たちの作品が、ほぼ改修工事前と同じ場所に展示されている。レンブラントの《テュルプ博士の解剖学講義》、フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》(図3)《デルフトの眺望》をなど、オランダ17世紀の黄金時代を代表する絵画が新しくなった美術館に戻ってきたのだが、まるで「ここが私の家だ」というようにしっくりと馴染んでいる。美術館館長エミリー・ゴーデンガーは「マウリッツハイス美術館の魅力は、所蔵する作品と調和した家のような規模の美術館であること」と語っている。2年の時を経て、小さく愛らしい真珠のような美術館がふたたび新しい輝きを放ちだした。

6月27日の美術館のオープニングの様子がYoutubeで公開されている。フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》が美術館の改装中に世界中を旅してきたことがユーモラスに表現され、そのあとで美術館の内部の様子が少し紹介されている。

fig.3 Johannes Vermeer, Girl with a Pearl Earring,  c. 1665, Mauritshuis, The Hague.
マウリッツハイス美術館 Mauritshuis Museum
Plein 29
2511CS, Den Haag
The Netherlands
http://www.mauritshuis.nl/en/

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