ピカソはスペイン内戦のさなかゲルニカが受けた無差別爆撃を題材にした《ゲルニカ》を描いた。戦争の悲惨さを圧倒的なスケールで描いたこの作品は、20世紀美術における最も重要な作品のひとつである。パリのピカソ美術館では、現在《ゲルニカ》所蔵するスペイン・マドリッドのソフィア王妃芸術センターの協力により、《ゲルニカ》を描くに至った経緯や制作中の様子、発表後の反響などを多角的に検証する展覧会が開催されている。
ゲルニカ無差別空襲は1937年4月26日に起きた。パリではその2日後に写真や証言などが報道されはじめ、ピカソはそこでゲルニカに起きた悲劇を知る。その3日後である5月1日にピカソは既に《ゲルニカ》の制作にとりかかっており、約一か月後の6月4日には作品を完成させている。
写真家ドラ・マールは《ゲルニカ》の制作過程を撮影していた(fig.1)。そこには、縦349cm×横777cmの巨大なカンヴァスを前に、格闘する作家の痕跡が詳細に記録されている。その写真を見ると、初期段階で描いていた太陽を背景にした拳を消したり、また戸外の風景であった作品を室内の風景としたり、さまざなま変更が加えられていたことがわかる。
展示室では当時の新聞記事も展示されており、ゲルニカ無差別空襲と《ゲルニカ》の発表がスペイン国内でどのように報道されたのかを知ることができる。また、スペイン内戦の情勢を示すポスターや、ピカソが《ゲルニカ》の一部分に採用した自身の過去作品や制作時の習作群なども並べられ、ピカソの傑作《ゲルニカ》が多角的に紹介されている。後にファシズムとの闘いのシンボルとして世界を巡回した軌跡や、《ゲルニカ》に影響を受けた現代美術作品も多数展示されていた。
「ゲルニカ制作 80周年」展と時期を同じくして、ロンドンのテイト・モダンでは「ピカソ 1932年」展が9月9日まで開催中であり、本展覧会終了後の9月18日からはパリのオルセー美術館で「ピカソ―青の時代、バラ色の時代」が開催される。俄かに今年はピカソに注目が集まっているようである。
「ゲルニカ制作 80周年」展は7月29日まで
5 rue de Thorigny
75003 Paris
France
http://www.museepicassoparis.fr/en/
開館時間:
火 – 金曜 10:30-18:00
土、日曜 9:30—18:00
2018年7月7日-9月1日 9:30-18:00
2018年10月20日-11月5日 9:30-18:00
2018年12月22日-2019年1月7日 9:30-18:00
休館日:
月曜日、1月1日、5月1日、12月25日