ロンドンのテート・モダンで、ジョージア・オキーフの回顧展が開催中である。20世紀初頭、ヨーロッパで始まったキュビスムなどの前衛芸術運動に触発されたアメリカの芸術家たちは、それまでにない斬新な表現を生み出した。アメリカ美術が最も刺激的でダイナミックに変化した時代をけん引したアーティストの一人がオキーフであった。
近代写真の影響
オキーフは今からちょうど100年前の1916年にニューヨークでデビューし、その後70年にもおよぶ長い画業を歩んだ。そのなかで彼女が描いたのは花や風景、動物の骨など限られたモティーフであり、それらを極端に拡大した構図で描いた。この特徴的な構図は近代写真の影響が指摘されている。とくに近代写真の父と呼ばれ、ヨーロッパの前衛美術を紹介するギャラリーの主催者であり、またオキーフの夫でもあったアルフレッド・スティグリッツの影響は大きかった。
極端に拡大された花
彼女の代表作である《チョウセンアサガオ/白い花No. 1》(fig.1)は、一輪の朝鮮朝顔が描かれている。カンヴァスいっぱいに拡大されているが、蕊や葉脈は簡略化され、青・緑・白といった限られた色彩の濃淡で表現されている。伝統的なテーマである花卉画に写真の技法を用いて、新しい表現を与えた。
アメリカの原風景
アメリカ南西部にあるニューメキシコ州に魅了され何度も訪れていたオキーフは、スティグリッツの死後に郊外のアビキューに移り住んだ。そこでは乾いた荒涼とした自然や、自ら拾い集めた石や水牛の骨をモティーフに作品を制作した。1970年代から視力が弱りはじめたが、アシスタントの力を借りながら、98歳で亡くなるまで制作を続けた。
「ジョージア・オキーフ」展は10月30日まで(月曜日休館)
テート・モダン Tate Modern