杉本博司―ブラック・ボックス

Overview Foam Museum

オランダのアムステルダムにて、杉本博司の写真展「ブラック・ボックス」が開催中である。杉本博司は1970年からニューヨークを拠点として活躍し、大型カメラを用いた精緻な写真表現で国際的に高い評価を得ているアーティストだ。

写真はタイムマシン

展覧会は「海景」のシリーズから始まる。静かに降り注ぐ光と波によってかろうじて判別できる海。人類が誕生するはるか昔より続いてきた景観だ。杉本はカメラを「タイムマシン」と呼ぶ。「海景」や、書き割りの前においた動物の剥製を撮影した「ジオラマ」では古代の情景を写し出し、「ヘンリー八世」では16世紀にホルバインが描いた肖像画をの人物を再現し、写真の発明者の一人であるフォックス・タルボットらが行った実験を再現した「放電場」では我々に19世紀の大発見を目の前に提示する。

織り込まれた時間

眼では追いきれない一瞬をとらえてきた写真において、杉本は時間の流れを織り込んだ。映画館で上映中シャッターを開き続け、映画一本分の時間の光を写し取った「劇場」のシリーズである。人間の眼とカメラの構造はほとんど同じだが、人間は映画のストーリーを記憶し、カメラではストーリーは消え去り、光に照らされた劇場の様子を記録する。
杉本の作品は、洗練された丹念な職人的な技術によって、静謐な光の中で時間を内包しながら穏やかに煌めいている。

「杉本博司-ブラック・ボックス」展は3月8日まで(会期中無休)

Foam Museum
Museumeiland 1
Keizersgracht 609
1017 DS Amsterdam
The Netherlands
https://www.foam.org
開館時間:月曜日~日曜日 10:00-18:00(木・金曜日は21:00まで)

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