ピュア・ルーベンス

Fig. 1 Peter Paul Rubens, England, Scotland, Minerva, Cupid and Two Victories, c. 1632, Oil on panel, 64.5 x 49 cm, Rotterdam, Museum Boijmans Van Beuningen, inv. 2516

17世紀フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスの死後、彼のアトリエの一室に保管されていた数百点ものオイル・スケッチ(油彩下絵)の存在が明らかになった。これらのオイル・スケッチはルーベンスが作品制作の準備段階に描いたもので、門外不出のものであった。ルーベンスの制作の秘密とも呼べるこれらのオイル・スケッチを集めた展覧会「ピュア・ルーベンス」が、オランダ・ロッテルダムのボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館で開催されている。

完成予想図としてのオイル・スケッチ

オイル・スケッチは習作や模写を行う際に用いられることが一般的だが、ルーベンスはそれ以外の目的をもってこれらのオイル・スケッチを制作した。
まず、作品の注文主に最終的な作品の姿を示すための構想図としてのオイル・スケッチである。ルーベンスに依頼された作品の多くは大画面で、天井画などを請け負った場合には数も多く、注文主たちは完成図がどのようなものになるのかを知りたがった。ルーベンスにとっても、事前に注文主に確認することで、完成後に修正を加える手間を省くことができたのである。

手本としてのオイル・スケッチ

また、作品制作を行う際の手本としてもオイル・スケッチは利用された。ルーベンスはヨーロッパ中から殺到する大量の注文に応えるため、大規模な工房を組織していた。そこでは工房の画家たちがオイル・スケッチに基づいて制作を担当し、最後にルーベンスが仕上げることで効率的に数千点ともいわれる作品を作り上げていった。もちろんルーベンスが一人で作品を完成させることもあったが、その時もオイル・スケッチは重要な役割を担っていた。展覧会会場ではオイル・スケッチと完成作が比較できる位置に展示されており、見比べると完成作が構図や色彩においてオイル・スケッチの拡大版で、いかに最初の構想に基づいて制作されたかがわかる。
「ピュア・ルーベンス」展では、17世紀に最も影響力を持った画家として、質と量ともに不動の地位を築いたルーベンスの多彩な芸術活動の秘密を見ることができる。
「ピュア・ルーベンス」展は2019年1月13日まで開催。

ボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館 Museum Boijmans Van Beuningen

Museumpark 18-20
3015 CX Rotterdam
the Netherlands
http://www.boijmans.nl/en/

開館時間:
火曜日~日曜日 11:00-17:00
12月5日、12月24日、12月31日 11:00-16:00

休館日:
毎週月曜日及び1月1日、4月27日、12月25日

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA